川をくだる。

人生という大河をくだっているところ

おもちゃの街

 

労働に疲れた。疲れているせいなのか、現実が全部作り物なんじゃないかと思えてくる。

 

電車の車窓から見える青い空と白い雲と、ぎっしり隙間なく立ち並ぶ民家の低い屋根、そびえ立つビルたち。夏の光のコントラストの強さも相まって、東京の町は全部作り物のミニチュアなんじゃないかと思った。

 

仕事で銀座に行くときもこの感覚になる。白くてまっすぐで人工的な美しいストリートと、その両脇に隙間なく並ぶ見目美しいブランド品や飲食店のビル。生活の匂いはせず、人生の楽しいだけをありったけ集めた大人のためのおもちゃの街だ。

 

そんな作り物の街を走るおもちゃの電車に乗り、毎日同じビルに出勤している私も実はおもちゃで、気づいていないだけでLEGOブロックのカクカクした人間みたいな感じなのかもしれない。

 

会社では一つの部屋に人間が密集して、皆真剣な面持ちでパソコンのキーをパチパチ打っている。エクセルやワードを閉じたり開いたり、メールの文章を読んだり書いたり。その姿だけを見てみると一人一人が何の為に何の仕事をしていて世界にどのような作用をもたらしているのか分からない。パソコンやスマートフォンを介して行われているやりとりなんて、本当は全て存在していないのではなかと思えてくる。

 

仕事なんか存在していなくて、全部嘘で、労働は現実に作用していなくて、全ては空想上の遊びにすぎないのかもしれない。